住宅ローン減税の拡充について
1 はじめに
いわゆる住宅ローン減税 ( 法律用語では「住宅借入金等特別控除」と言います ) は、住宅を取得
等した際に、借入金の年末残高の1%相当額を所得税から ( 所得税から引ききれない場合には住
民税から ) 差し引くことができる制度です。
長い期間において行われてきた制度で、適用を受けている方も多くいらっしゃるかと思います。
今回の税制改正で、消費税率10%で住宅を取得等した場合に、これまでより住宅ローン減税を
受けることができる期間が拡充されました。
ここでは、従来の制度との比較を簡単に述べさせていただきます。
2 従来の制度
(1) 概要
2014年1月1日から2021年12月31日までの期間に、住宅の取得等をして、居住の用に供した
場合、一定の要件を満たせば、その住宅の取得等にかかる借入金の年末残高を基にして計算
した金額を、居住の用に供した年以後10年間の各年分の所得税額から、控除することができ
るものです。
(2) 住宅の種類による限度額の違い
① 認定長期優良住宅や認定低炭素住宅以外の住宅
・借入金の年末残高と、住宅の取得等に要した金額と、いずれか低い金額 ( 以下、「年
末残高等」)
・( 最大4,000万円 ) × 1%
② 認定長期優良住宅や認定低炭素住宅
・年末残高等
・ ( 最大5,000万円 ) × 1%
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は、エコに配慮した一定の住宅として、公的な認証を受け
たものです。その取得により、控除することができる率などは変わりませんが、住宅ローンの
枠が最大5,000万円まで拡充され、1年に控除することができる所得税も最大50万円に拡充され
ています。
3 改正項目
(1) 概要
2019年10月1日の消費税の改正後に消費税率10%で住宅の取得等をし、2019年10月1日から
2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合、税額控除を受けることができる期間が、
従来の10年間から13年間に延長されます。
(2) 11年目以降の控除額
① 認定長期優良住宅や認定低炭素住宅以外の住宅
イ)1年目~10年目
年末残高等 ( 最大4,000万円 ) × 1%
ロ)11年目~13年目
次の1)と2)のいずれか少ない金額
1) 年末残高等 ( 最大4,000万円 ) × 1%
2) 住宅 ( 建物部分 ) の購入価額 ( 消費税抜・最大4,000万円 ) × 2% ÷ 3年
② 認定長期優良住宅や認定低炭素住宅
イ)1年目~10年目
年末残高等 ( 最大5,000万円 ) ×1%
ロ)11年目~13年目
次の1)と2)のいずれか少ない金額
1) 年末残高等 ( 最大5,000万円 ) × 1%
2) 住宅 ( 建物部分 ) の購入価額 ( 消費税抜・最大5,000万円 ) × 2% ÷ 3年
①、②とも1年目~10年目は従来の制度と同様です。
11年目以降は、算式の通り1)借入金の残高の1%と、2)建物の購入価額にかかった消費税の増
税分 ( 10% - 8% = 2% ) を3年間で按分した金額とのいずれか低い金額となります。
借入金の額が少なくならない限り、2)の金額の方が少ないため、2)の金額、つまり、消費税の
増税による負担額を3年間で控除する制度です。
(3) 注意点
2019年10月1日以後に住宅の取得等をした場合でも、建築の契約を2019年3月31日までにした
場合、建物に係る消費税率が8%になる、いわゆる消費税の経過措置の適用を受けられます。
その場合、これまでに述べたような、11年目以降の拡充は受けられません。あくまで、2019年
10月1日以後に消費税率10%で住宅の取得等をした場合の特例です。
また、従来の住宅ローン減税と同様に、その住宅を居住の用に供しなくなった場合や、その年
分の所得の金額が3,000万円を超える場合など、通常の住宅ローン減税の適用を受ける要件に
該当しなくなった場合も、この拡充の対象外になります。
4 終わりに
2で述べました通り、2019年10月1日以後に消費税が10%になることが前提の制度です。
これから10月に向けて、税制の動向にご注意ください。