災害を受けたときの税務手続きなど
1 はじめに
台風15号や台風19号で被害を受けた方には心よりお見舞い申し上げます。
2019年には他にも8月の九州北部を中心とした豪雨災害など、多くの災害が起きていま
す。災害は受けないに越したことはありませんが、受けてしまうことは避けられないこと
があります。
災害後に手続きを取って頂くことで、法人税や所得税などの申告期限の延長や所得税の軽
減などを受けることが可能になります。
ここでは、手続きの概要などをお伝えします。
2 申告・納付などの期限の延長、納税の猶予
(1)期限の延長
災害等の理由により申告・納付などをその期限までにできないときは、所轄税務署長に
申請することにより、その理由のやんだ日から2ヶ月以内の範囲でその期限を延長する
ことができます。
この期限延長の申請は、期限が経過した後でも行うことができます。被災の状況が落ち
着いてから、最寄りの税務署か関与している会計事務所にお問い合わせください。
(2)納税の猶予
災害等により相当の損失を受けたときは、所轄税務署長に申請することにより、下記の
とおり納税の猶予を受けることができます。
①損失を受けた日に納期限が到来していない国税
損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税 … 納期限から1年以内
所得税の予定納税や法人税・消費税の中間申告分 … 確定申告書の提出期限まで
②既に納期限が到来している国税
一時に納付することができないと認められる国税 … 原則1年以内
3 所得税の予定納税の減額、源泉徴収の猶予など
(1)予定納税の減額
①所得税法の規定
災害を受けた日の区分により、次の2種類のどちらかの申請をしていただきます
a)災害を受けた日が 1月1日~6月30日
6月30日の現況により、その年の所得と税額を見積り、原則7月15日までに第1期及び
第2期の減額を申請していただきます。
b)災害を受けた日が7月1日~10月31日
10月31日の現況により、その年の所得と税額を見積り、原則11月15日までに第2期
の減額を申請していただきます。
②災害減免法の規定
7月1日~12月31日に災害を受けた場合で、次の(1),(2)のいずれにも該当するときは、
その年の所得と「所得税の軽減額の計算」による税額を見積り、災害のあった日から
2ヶ月以内に減額を申請していただきます。
(1) 住宅や家財に受けた損害額がその価額の1/2以上であること
(2) その年の所得金額の見積額が1,000万円以下であること
③給与所得者の源泉所得税の徴収猶予
上記②の(1),(2)のいずれにも該当する場合には、所得金額の見積額に応じて源泉所得
税税額の徴収猶予や還付を受けることができます。
徴収猶予申請書を、災害を受けた日以後、最初に給与の支払を受ける日の前日までに
勤務先を経由して、災害を受けた方の納税地の所轄税務署長に申請していただきます。
4 所得税の軽減
(1)雑損控除(所得控除)
住宅や家財を含む生活に通常必要な資産に災害、盗難、横領による損失を受けた場合、
下記の①と②のいずれか多い金額を確定申告の際に所得から控除することができます。
① 損失額 ― 所得金額の1/10
② 損失額のうち災害関連支出の金額 - 5万円
注:災害関連支出とは、災害により滅失した住宅や家財などの取壊し、除去、原状回復費
用など、災害に関連して支出したやむを得ない費用をいいます。
(2)災害減免法による軽減(税額軽減)
住宅や家財の災害による損失額が、その価額の1/2以上である場合、その年分の所得に応
じて下記の金額が確定申告の際に所得税及び復興特別所得税から軽減されます。
なお、表の通り所得が1,000万円を超える方は、災害減免法による軽減は受けられませ
ん。
5 法人税や所得税の事業所得などの取扱い
(1)被災事業用資産の損失
事業用に利用している棚卸資産や機械、器具備品などが災害により損失を受けた場合に
は、その損失の金額は必要経費に算入できます。
なお、その損失を補てんするために受け取った保険金などの額は損失の金額から控除し
ます。
(2)災害損失欠損金の繰戻しによる法人税額の還付
災害のあった日から1年以内に終了する事業年度において、災害損失欠損金額がある場合
には、その事業年度開始の日から1年(青色申告の場合は2年)以内に開始した事業年度
の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求すること
ができます。
6 消費税の特例
「災害等が生じたことによる簡易課税制度の適用(不適用)に関する特例」
災害等が生じたことにより被害を受けた事業者が、その被害を受けたことにより、簡易課
税制度の適用を受けることが必要となった場合、又は必要がなくなった場合には、税務署
長の承認を受けることにより、その災害等が生じた日の属する課税期間から、簡易課税制
度の適用を受けること、又はやめることができます。
7 おわりに
他にも住宅ローン減税の適用期間の特例や、相続税や贈与税の軽減などの特例がありま
す。
多くの特例で、市町村役場から発行される、り災証明書が必要になります。また、災害を
受けた資産について原状回復を行った場合などは、雑損控除の計算に必要になる可能性が
ありますので、請求書、領収書など内容と金額が分かる書類を保存していただき、ご不明
点があれば最寄りの税務署や、会計事務所にお問い合わせ下さい。