年末調整注意事項<令和1年>
1 はじめに
いよいよ年末調整のための扶養控除等申告書などの書類が税務署から送られ、皆様に記載
していただく時期になりました。
年末調整で注意すべきことをまとめましたので、ご参照ください。
2 年末調整における注意事項
(1)平成31年分扶養控除等申告書への記載についての注意事項
① 令和元年中に異動があって訂正する場合
令和元年中に扶養親族の方の異動 ( 結婚、就職、誕生、死亡など ) があって、平成31
年分の扶養控除等申告書を訂正する場合には、異動があった方の行右側の「異動月日及
び事由」に例えば「4月1日就職」「7月1日死去」などとご記載ください。
②「A源泉控除対象配偶者」
ご本人の合計所得金額 ( 見積額 ) が900万円以下で、生計を一にする配偶者の方の合計
所得金額が85万円以下の場合には、ご記載ください。
③「B控除対象扶養親族」
16歳以上の扶養親族 ( 平成31年分は平成16年1月1日以前に生まれた方 ) をご記載くだ
さい。
また、特定扶養親族 ( 19歳以上23歳未満 ) や老人扶養親族 ( 70歳以上 ) に該当する
方、同居老親等 ( 老人扶養親族のうち、ご本人か配偶者の方のご両親や祖父母の方で、
同居している方 ) がいらっしゃる場合はチェックを忘れないようにしましょう。
16歳未満の扶養親族 ( 平成31年分は平成16年1月2日以後に生まれた方 ) は、「B控除
対象扶養親族」ではなく、下の段の「16歳未満の扶養親族」の欄にご記載ください。
④「C障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」
ご本人が寡婦か寡夫に該当する場合、ご本人か配偶者、扶養親族に障害者の方がいらっ
しゃる場合、又はご本人が勤労学生に該当する場合は、それぞれ「C障害者、寡婦、
寡夫又は勤労学生」の欄にチェックを忘れないようにしてください。
(2)令和2年分扶養控除等申告書の注意事項
① 所得税の改正
令和2年分から、下記のような所得税の改正が行われました。
イ)給与所得控除の改正
給与所得控除額が一律10万円引き下げられました。
給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額が850万円、その上限額が195
万円以下にそれぞれ引き下げられました。
ロ)給与所得控除の改正
基礎控除額が10万円引き上げられました。 ( 通常の方は48万円 )
合計所得金額が2,400万円を超える方についてはその合計所得金額に応じて控除額が
下記の表の通り減少し、合計所得金額が2,500万円を超える方については基礎控除の
適用ができないこととされました。
多くの方が、給与所得控除が10万円減少して基礎控除が10万円増加するため、収入
金額が同じなら、給与所得控除後の所得は同じになります。
また、②以降に記載の通り、源泉控除対象配偶者や扶養親族の基準となる所得金額も
見直されたため、パートなど給与所得のみの方が源泉控除対象配偶者や扶養親族に
なるかどうかの基準となる収入金額は、令和元年と変わりません。
②「A源泉控除対象配偶者」
ご本人の合計所得金額 ( 見積額 ) が900万円以下で、生計を一にする配偶者の方の合計
所得金額が95万円以下の場合には、ご記載ください。
配偶者の方の合計所得金額は従来の85万円以下から95万円以下と、対象となる範囲が
変わりましたが、給与所得控除前の収入金額で考えると、従来通り150万円以下です。
③「B控除対象扶養親族」
扶養親族の所得の範囲が48万円以下になりました。収入が給与のみの方については、収
入金額は103万円以下で、従来と一緒です。
特定扶養親族や老人扶養親族、同居老親等、16歳未満の扶養親族がいらっしゃる場合の
注意点は平成31年分扶養控除等申告書と同様です。
④「C障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」
寡婦や寡夫 ( 扶養親族などの所得の判定が48万円以下になりました ) 、勤労学生
( 所得の判定が75万円以下になりました ) の判定基準となる所得が変更された以外は、
注意点は平成31年分扶養控除等申告書と同様です。
⑤「単身児童扶養者」欄の創設
児童扶養手当の支給を受けている方で、その児童と生計を一にする父又は母のうち、
婚姻 ( 届出をしていない事実婚の方を含みます ) をしていない方、又は配偶者の生死が
明らかでない方については、左の欄にチェックを付けていただき、児童扶養手当証書の
番号、生計を一にする ( 扶養している ) 児童の氏名、その児童の所得の見積り額を記載
して下さい。
(3)保険料控除申告書への記載、添付書類の注意事項
① 生命保険料
控除証明書の添付が必要です。
イ)保険の種類 ( 一般、医療・介護、個人年金 ) に気を付けましょう。
保険の種類が年金保険となっていても、保険料控除証明書は「一般用」の欄に記載さ
れている保険があります。そのような場合、あくまで保険料控除証明書に従って、
保険料等控除申告書の「一般の生命保険料」の欄にご記載ください。
ロ)適用される制度 ( 新、旧 ) に気を付けましょう。
平成24年1月1日以後に契約した保険が新制度、平成23年12月31日以前に契約した保
険が旧制度の対象となります。
② 地震保険料
控除証明書の添付が必要です。
いわゆる「地震保険料」と、「旧長期損害保険料」 ( 満期返戻金がある長期
( 10年以上 ) の損害保険で平成18年12月31日以前に契約したもの ) の二種類がありま
すので、種類ごとにご集計ください。
③ 社会保険料
控除証明書の添付が必要です。
イ)国民年金
控除証明書の添付が必要です。
控除証明書が無い方、12月になってから現金で支払されたような方は領収書が控除証
明書の代わりになります。
そのような方は、控除証明書と領収書の合計額をご記載ください。
ロ)国民保険料
証明書は不要です。年間の支払金額の合計額をご記載ください。
年内に支払ったものだけが年末調整の対象です。
例) 令和元年12月分でも支払が令和2年1月以降なら除外
平成30年12月以前の分でも支払が令和元年中なら対象
④ 小規模企業共済等掛金
掛金払込証明書の添付が必要です。
加入手続きを10月以降に行ったような場合には、振込金受取書が証明書の代わりになり
ます。
また、1年分前払いしたような場合、「前納減額金」といって、掛金の一部が減額され
ることがあります。その場合には、掛金の年間合計額から「前納減額金」の額を差し引
いた金額をご記載ください。
(4)配偶者控除等申告書の記載方法と注意事項
① 記載方法
ご本人の所得が1,000万円以下で、生計を一にする配偶者の方の所得が123万円以下の
場合にご記載ください。
まず、ご本人の合計所得金額の見積額を記載してください。それが、
900万円以下ならA、
900万円超950万円以下ならB、
950万円超1,000万円以下ならC
の欄にチェックを入れてください。その結果を「区分Ⅰ」欄に記載してください。
次に、配偶者の方の合計所得金額の見積額を記載してください。その金額と配偶者の方
の年齢によって、
①「38万円以下かつ年齢70歳以上」
②「38万円以下かつ年齢70歳未満」
③「38万円超85万円以下」
④「85万円超123万円以下」
の該当する欄にチェックを入れてください。その結果を「区分Ⅱ」欄に記載してくださ
い。
上記「区分Ⅰ」「区分Ⅱ」の結果を基に、「控除額の計算」欄に当てはめて、配偶者控
除額又は配偶者特別控除額を求めて、記載してください。
例:B ( ご本人900万円超950万円以下 ) 且つ② ( 配偶者の方38万円以下で70歳未満 )
→26万円を「配偶者控除」の欄に
A ( ご本人900万円以下 ) 且つ④で配偶者の方の合計所得金額が91万円
→31万円を「配偶者特別控除」の欄に
配偶者の方の合計所得金額が85万円を超えて123万円以下の場合、その金額によって④
でも配偶者特別控除の額が異なりますのでご注意ください。
② 注意事項
ご本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除及び配偶者特別控除の
適用を受けることはできません。
配偶者の方の合計所得金額が38万円を超える場合は、控除対象配偶者ではありません。
合計所得金額が38万円を超えて85万円以下の場合は、配偶者控除と同額の配偶者特別
控除 ( ご本人の合計所得金額が900万円以下の場合は38万円 ) を受けることができま
すが控除対象配偶者ではないので、老人控除対象配偶者 ( 控除対象配偶者で、70歳以
上 ) や障害者控除 ( 控除対象配偶者で、障害者の方 ) の対象になりません。
また、配偶者控除等申告書の中段にある、合計所得金額の計算の欄で、給与所得のみの
方は表に当てはめていただけば所得金額の計算が容易ですが、不動産所得や年金の雑所
得など、給与所得以外の所得もある方は、それも含めた合計所得金額の見積額を計算し
ていただくことになりますので、計算誤りのないようにしてください。
3 おわりに
今年度の年末調整は平成30年分と大きい変更点はありません。しかし、令和2年から
「2」に記載の通り、基礎控除、給与所得控除などが変更されるため、令和2年分の扶養
控除等申告書は平成31年分と比べて様式が変更されています。
多くのところで保険料控除等申告書や配偶者控除等申告書と合わせて令和2年分の扶養控除
等申告書を配布されているかと思います。源泉控除対象配偶者や扶養親族の判定などにご
注意下さい。