教育資金の一括贈与について (税制改正大綱より)
1 はじめに
現在、祖父母などの直系尊属 ( 以下「祖父母等」といいます ) から30歳未満の孫に一括で教育
資金を贈与する場合、1,500万円まで贈与税の課税価格に含まれません。その後、一定の教育に
利用して30歳までに使い切れば、全て贈与税の課税対象になりません。
これが、いわゆる教育資金の一括贈与にかかる非課税制度です。なお、教育資金は必要な金額を
その都度贈与すれば、そもそも贈与税はかかりませんが、一括して贈与すれば、祖父母等が亡く
なった際に、相続財産から除かれます。
この節税になる部分が改正される予定です。
ここでは改正点と注意すべき事項について簡単に述べさせていただきます。
2 従来の制度と改正点
(1) 従来の制度
従来の制度は2019年3月31日が期限になっています。
上記に記載の通り、30歳未満の孫に一括で教育資金を贈与する場合、1,500万円までは贈与税
が猶予されます。
祖父母等が亡くなった際に、通常の贈与では亡くなる前3年以内に行われたものは相続財産に
含めることになっていますが、この特例を利用した贈与については相続財産から除かれます。
ただし、孫が30歳になった時点で使い切れない残額がある場合、その残額は孫が祖父母等から
贈与を受けたものとして、贈与税を申告する必要があります。
(2) 改正点
① 相続開始前3年以内の贈与の相続財産への加算
2019年4月1日以後の教育資金の一括贈与については、相続開始がこの贈与から3年以内の
場合、一括贈与した教育資金の残額が相続税の対象になります。
ただし、
・ 贈与された孫が23歳未満である
・ 学校等(注)に在学している
・ 教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している
のいずれかに該当する場合は除かれます。
(注)学校等
学校教育法第1条に規定する学校や第124条に規定する専修学校、その他保育所などの
一定の施設
従って、贈与後3年以内に祖父母等が死亡しなければ、この改正の影響を受けません。
しかし、贈与をされた祖父母等がいつ亡くなられるかは予測がつきませんので、相続税の
節税をお考えの方は、2019年3月31日までにこの制度をご利用ください。
② 贈与される孫の所得制限
従来の制度では贈与を受ける孫には所得制限はありませんでした。
今度の改正で、贈与があった年の前年における孫の所得が1,000万円を超えていると、この
制度は使えなくなります。
ただし、前年の所得で判定しますので、前年だけ所得が増えて1,000万円を超えた場合に
は、翌年に贈与すれば所得制限の影響は受けません。
③ 23歳以上の孫の教育資金の使途の制限
従来の制度では、500万円までという制限はありますが、学習塾や習い事の費用、その物品
の購入費など、入学金や授業料以外のものにも使えました。
改正後、23歳以上の孫が使える範囲は、
・大学などの入学金や授業料
・通学定期や留学渡航費用
・教育訓練給付金の対象となる教育訓練の受講料
に限定されます。
スポーツや文化芸術などの活動には利用できなくなりますので、ご注意ください。
④ 贈与を受けた孫が30歳になった時点の残額の取扱い
従来の制度では、贈与を受けた孫が30歳になった時点で、贈与された金額が残っていると、
その金額が贈与税の対象になりました。
改正後、30歳になった時点で、
・学校に在学している
・教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受講している
のどちらかに該当すれば、それが終了する日、または40歳になる日のどちらか早い日まで、
贈与税はかかりません。
3 終わりに
上記に記載の通り、相続税の非課税制度を確実に利用したいなら、2019年3月31日までに贈与
手続きを行ってください。
また、23歳以上の孫については、使途が制限されますので、この贈与を受けてどういう活動に
利用するかをあらかじめご検討ください。
なお、この改正は、現在税制改正大綱に盛り込まれており、例年税制改正法案が可決して決定
するのは3月後半になりますので、2019年1月現在は未確定です。
従って、最終的には一部異なる形で法案が可決する可能性もあり、注意が必要ですが、3月31日
までに手続きを行う必要があるものもあり、早めにご検討頂きたくご案内差し上げました。