読書熱
大雨の影響が、未だあちこちに爪痕を残しております。逸早い回復を祈念しますとともに、被害に遭った方々への、心よりのお見舞いを申し上げたく思う次第です。
十月となりました。吹く風に、秋の気配を色濃く感じます。涼やかで、それでいて物悲しい。人の本能の奥底に、リンクしかけてくる何かがあります。それ故か、秋は、何をするにも素晴らしい。今年の私には、久しく消し炭となっていた読書熱に火を入れてくれたようです。
タイミングもよかったのでしょう、持つべきものは友、鬼のような読書家が、お薦めの本を教えてくれました。薦められるままに読むこと7冊、このひと月の冊数です。彼の方には感謝しなくてはなりません。薦めてもらわなければ、生涯交錯することのなかっただろうジャンルの本を読みました。つまりは、私に欠けている記憶の収められた本。私が体験することのなかった人生の収められた本です。
隠さずに申し上げるならば、胸を掻き毟られる想いと、とめどない涙を経験しました。しばらくのところ吐き出すばかりの機能しか果たさなかった脳髄に、ガツンとキックをくらった感じです。人はかく思い、かく行動することができるのかと。ジェネレーションギャップに悩んでおりましたここ最近、世代の違う作家の書いた作品を通し、その差異の根幹に触れるような想いがありました。
ひとつくらいであれば、紹介してくれた彼も許してくれるでしょうか。「エンジェルボール」、全4巻の小説です。野球の知識のある方ですと、さらに面白く読めるかもしれません。
私の仕事は、関わる方の人生を想像し、創造するものです。より深くその方の想いの奥底に近づける、そんな存在になってゆきたいと思います。秋の優しさと、友の存在に、感謝を込めて。
K.M