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消費税の改正

1 はじめに

今回の税制改正の中で、消費税について「居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除の適正化」という改正が行われました。ここでは、その内容と注意点について簡単に述べさせていただきます。
消費税については、特殊な用語が使われますので、いくつかの用語については(注)で説明を加えています。

 

2 概要

(1) 居住用賃貸建物とは

住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物(店舗や事務所などのテナント用建物など)以外の建物であって、高額特定資産(注)に該当するものをいいます。
アパートやマンションなどがその例です。

(注)高額特定資産:一の取引の単位につき、課税仕入れに係る税抜きの支払対価の額が
   1,000万円以上の棚卸資産、又は調整対象固定資産(注)をいいます。
(注)調整対象固定資産:棚卸資産以外の資産で、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る
   税抜きの支払対価の額が100万円以上の固定資産をいいます。

(2) 仕入税額控除制度の適用不可

アパートやマンションなどを購入した際にかかる消費税については、仕入税額控除制度の対象外になります。ただし、例えばマンションの一階部分にテナントが入っているなど、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分」がある場合には、その部分については引き続き仕入税額控除制度の対象となります。

(3)この制度の導入の経緯

居住用賃貸建物の取得に係る消費税額については、住宅家賃という非課税売上に対応するため、通常では仕入税額控除の対象にはなりません。しかし、課税売上割合が95%以上で課税売上が5億円以下の場合には全額が仕入税額控除の対象となっていましたし、課税売上が5億円超で課税売上割合が95%未満の場合も比例配分法(注)を適用すれば、課税売上割合に応じた税額が仕入税額控除の対象になっていました。
そのため、法人を設立して建物を取得し、例えば金の売買を繰り返すなどして課税売上を発生させて、居住用賃貸建物の取得に係る消費税額の還付を受ける事例が見られました。
通常、1期目に調整対象固定資産の取得を行って仕入税額控除を比例配分法で計算した場合、3期目に調整対象固定資産を有していて、3期目の課税売上割合が1期目の課税売上割合に比べて著しく変動していれば、3期目で仕入税額控除額を調整することになっています。
1期目だけ課税売上割合が高くても、3期目が低ければ、仕入税額控除額が3期目で減少することになっていますが、金の売買を3年間繰り返すような場合、課税売上割合が著しく変動しないため、3期目で仕入税額控除を調整する規定の適用もありませんでした。
このような、消費税の還付を受けるためのスキームを防止することを目的として、居住用賃貸建物の取得については、そもそも仕入税額控除制度の対象としない、従って還付も受けられないように見直されました。

(注)比例配分法:別対応方式による場合で、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共
   通して要する課税仕入れ等の税額として課税売上割合を乗じて計算する場合又は一括比
   例配分方式により計算する場合をいいます。

(注)課税売上割合が著しく変動した場合


かつ

又は


かつ

をいいます。

(4) 加算調整措置

(2)で述べたような仕入税額控除の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入れの日から、「同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日」までの間に、住宅の貸付け以外の貸付け(店舗や事務所などとしての貸付け)の用に供した場合または譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を、3年を経過する日の属する課税期間または譲渡した日の属する課税期間の仕入税額控除額に加算して調整します。

上記の説明は若干複雑ですが、取得時に居住用賃貸建物として購入したため仕入税額控除制度の対象とならなくても、その後3年以内に事務所や店舗など課税売上が発生する貸付けを行った場合や、売却した場合には、その課税売上に対応する部分は仕入税額控除制度の対象とします、ということです。

(5) 適用

この規定は、2020年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合について適用されます。
ただし、2020年3月31日までに締結した契約に基づき、2020年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合には、これまで通り仕入税額控除制度の対象となります。

 

3 おわりに

この制度は2の(3)で経緯を述べた通り、金の売買を繰り返し行うなどして課税売上を増やし、消費税の還付を受けるようなスキームを防止することが目的です。
しかし、もともと課税売上が多く、課税売上割合が高い法人などが居住用賃貸建物を購入する(テナントを多く持っている会社がマンション経営も行うなど)場合には、従来は一定の金額が仕入税額控除制度の対象となっていましたが、今後はならなくなります。
消費税についての大きな改正ですので、適用要件をきちんと確認されて、適用誤りがないようにご注意ください。