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事業承継税制について

1 はじめに

 平成30年度税制改正において、経営者の株を後継者に引き継ぐ際に贈与税や相続税の納税を猶予する、いわゆる「事業承継税制」が抜本的に拡充されました。従来の制度との比較とについて、簡単にお伝えします。

2 従来の制度

 (1) 適用対象株式数と納税猶予割合

  ① 適用対象株式数の上限
    贈与税、相続税とも議決権株式総数の 2/3 が上限です。

  ② 納税猶予割合
    贈与税 100%  相続税 80%

  このため、贈与税については議決権株式総数の2/3 × 納税猶予割合100% = 約66%
  相続税については議決権株式総数の2/3×納税猶予割合 80%=約53% が納税猶予を受けられる
  限度でした。

 (2) 対象者

  ① 贈与や相続により株を渡す方
     先代の経営者の方お一人のみが対象でした。

  ② 株を受け取り引き継ぐ方
     後継者の方お一人への贈与又は相続のみが対象でした。

 (3) 雇用要件

   5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められていました。
   この要件を満たせなかった場合、それまで猶予されていた贈与税又は相続税を全額納める
   必要がありました。

 (4) 承継時の株価による納税

   後継者の方が自主廃業、株の売却などを行う場合、経営環境の変化により株価が下落した
   場合でも、承継の時の株価を基に贈与税又は相続税を納める必要がありました。

 (5) 相続時精算課税制度

   平成29年度税制改正により、事業承継税制の対象となる株の贈与について、60歳以上の両親
   又は祖父母から、20歳以上の子か孫への贈与に該当する場合、相続時精算課税制度の対象と
   なりました。

3 改正点

 (1) 適用対象株式数と納税猶予割合の拡充

  ① 適用対象株式数の上限撤廃
     全ての株式が適用可能になりました。

  ② 納税猶予割合
     贈与税、相続税とも100%になりました。
     従って、贈与税、相続税とも全額納税猶予になり、承継する際に贈与税又は相続税を
     負担しないでよくなります。

 (2) 対象者の拡充

  ① 贈与や相続により株を渡す方
     従来は先代の経営者の方お一人のみでしたが、先代の経営者の方お一人に限らず、
     複数の方からの贈与又は相続による承継が対象になります。

  ② 株を受け取り引き継ぐ方
     従来は後継者の方お一人のみでしたが、次の要件を満たす方について、最大三人
     まで対象になります。
     【要件】
      1) 代表権を有する方
      2) 複数人で承継する場合、承継によって議決権割合の10%以上を有し、かつ、
        議決権保有割合上位3位までの同族関係者の方に限ります。

     この拡充によって、現在複数の方が株をお持ちで、従来の制度では事業承継税制を利用
     して後継者の方に引き継ぐことが出来る株の割合が低かった会社も、株主の方の合意を
     得れば、後継者の方に全ての株を無税で引き継ぐことが出来ます。
     また、先代の経営者の方のお子さんが二人以上会社に入られていて、それぞれの方に
     株を引き継ぐ、というような場合も、上記の要件を満たせば事業承継税制の対象に
     なります。

 (3) 雇用要件の実質的な撤廃

   従来は、上記2(3)に記載の通り、5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められ、満た
   せなかった場合、納税猶予額の全額を納める必要がありました。
   5年間平均で8割を満たせなかった場合でも、その理由を記載した書類に「認定経営革新等支
   援機関」の意見を記載し、都道府県に提出すれば、納税猶予が継続することになりました。
   ただし、その理由が、経営悪化による場合、又は正当なものとして認められない場合、認定
   経営革新等支援機関から指導及び助言を受ける必要があります。

 (4) 贈与税や相続税の経営環境の変化に応じた減免

   従来は、上記2(4)に記載の通り、後継者の方が自主廃業、株の売却などを行って納税猶予が
   取り消しになった場合、経営環境の変化により株価が下落しても、承継の時の株価を基に
   贈与税又は相続税を納める必要がありました。
   一定の要件を満たす場合 (※注1)、自主廃業、株の売却などを行うとき、その時点での株価
   を基に納税額を再計算して、一定の納税猶予額が減免されることになりました。

    (※注1) 一定の要件とは次の何れかに該当する場合をいいます。
         1) 直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上赤字
         2) 直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上売上高が前年比減少
         3) 直前の事業年度終了の日における有利子負債が売上高の6ヶ月分相当額以上
         4) その会社が属する業種の上場会社の株価 ( 直前の事業年度終了の日以前
           1年間の平均 ) がその前年1年間の平均より下落
         5) 後継者の方が経営を継続できない特段の理由があるとき

 (5) 相続時精算課税制度の拡充

   上記2(5)の相続時精算課税制度の対象が、拡充されました。
   贈与をする方については60歳以上なら、後継者の方の親族以外の方も対象となります。
   贈与を受ける方については、20歳以上で、上記3(2)②の要件を満たす後継者の方が対象と
   なります。
   従って、年齢要件を満たせば、親族かどうかは問われず、相続時精算課税制度の対象とする
   ことができます。

 (6) この特例の適用期間

   2018年4月1日から2023年3月31日までの5年間に、特例承継計画(※注2)を都道府県に提出
   し、経済産業省の認定を受ける必要があります。
   この認定を受けて、2027年12月31日までの約10年間に上記の要件を満たす贈与又は相続に
   よる株の引き継ぎをした場合、納税猶予の適用を受けることができます。

   (※注2) 特例承継計画
        認定経営革新等支援機関から指導及び助言を受け、この規定の適用を受ける会社
        が作成した計画で、後継者や承継の時までの経営見通しなどを記載したもの

4 終わりに
 
 ここまで述べました通り、100%納税猶予が受けられ、対象者も拡充され、雇用要件も実質的に撤廃されるなど、これまでより大変使い勝手がよくなりました。
 ただし、ここに記載されていない要件 ( 先代の経営者の方が代表権を手放していることなど ) がありますので、適用には注意が必要です。
 特例承継計画の作成や、雇用要件を満たさなくなった場合などには、認定経営革新等支援機関からの指導及び助言が必要になります。認定経営革新等支援機関は金融機関や、会計事務所などが認定を受けていますので、お問い合わせ下さい。